受け口(反対咬合・しゃくれ)を治さないデメリット
受け口(反対咬合・しゃくれ)を矯正しないデメリットをまとめました。
受け口を治さないとどうなる……?
受け口(反対咬合・しゃくれ)を治さず、そのまま放置しておくことで引き起こされる弊害について解説しましょう。
肩こり
受け口による弊害といっても、肩こりとはなかなかイメージが結び付かないかもしれません。しかし、受け口と肩こりとは、密接につながっているのです。
ポイントとなるのが噛み合わせ。受け口によって上下のあごにズレが生じると、噛み合わせが悪くなります。すると、骨・筋肉のバランスも崩れるために肩へ負担がのしかかり、肩こりを誘発してしまうのです。
特に、下あごは人間がバランスをとるために重要な役割を担っているため、受け口は肩こりに直結してしまいます。
「肩こりの原因がわからない」「肩こりを治療してもすぐ悪くなる」といった人は、受け口がその原因となっているかもしれません。受け口の自覚はなくても、微妙にズレがある可能性もあるので、歯科で診てもらうといいでしょう。
腰痛
腰痛も、引き起こされるメカニズムは肩こりとほぼ同じ。噛み合わせの悪さ、バランスの悪さから背骨や体幹にひずみができ、腰へ負担がかかってしまうことから症状が悪化します。
また噛み合わせが悪いと、あごを支える筋肉を緊張状態にすることから、首にも負担がかかります。人間の身体の中でも特に重たい頭部を、首でしっかり支え切れないとなると、その比重・負担は腰へかかってきます。
あごからは離れた場所にあるからといって、腰も受け口と関係ないわけでないのです。むしろ、身体のバランスを司るセンターラインとして、切っても切れない関係といえるでしょう。ですから、受け口の方は腰痛のリスクが高いことを理解しておいてください。
発音異常
受け口の場合、舌足らずで発音がうまくできないことも珍しくありません。中でも、サ行・タ行・ダ行の発音が正しくできないケースが多く、滑舌の悪さの一因となります。サ行の中でも「し」、タ行の中でも「ち」などが発音しにくいようです。
日本語だけでなく、英語をはじめとした外国語を正しく発音できないこともありますので、海外旅行などで支障をきたすことも考えられるでしょう。
受け口による発音障害を放っておくと、発音が悪いことがコンプレックスとなり、人とうまくコミュニケーションがとれなくなる、といった二次障害に発展するリスクもあります。
「滑舌が悪いから舌が悪い」とは限らないので、滑舌の悪い方は受け口である可能性も疑ってみてください。
消化器系への負担増
下あごが突き出ることで噛み合わせが悪くなるのが、受け口。そのため、不正咬合となって食べ物を十分に咀嚼できず飲み込んでしまうことに。
しっかりと咀嚼せずに飲みこむと、当然、消化器系へ負担がかかり、胃腸へダメージを与えてしまいます。
消化器系が繰り返しダメージをうけると消化不良を起こし、便通にも影響をあたるため、もともと胃腸の弱い人はなおさら注意が必要です。
若いうちならまだしも、年齢を重ねると消化不良は体調不良に直結しますから、できるだけ早いうちに治療することをおすすめします。
また、しっかり噛まないで食べることで早食いになってしまい、太りやすくなってしまうリスクも。いずれにせよ、からだの内側にも負担がかかるため、早期の対処が求められます。
見た目
受け口は、いわゆる「しゃくれ」。見た目的に気にする人も多いでしょう。受け口がコンプレックスで悩んでいる方も少なくなく、人、特に初対面の人がいる場へ行くことを敬遠しがちになってしまいます。
見た目にコンプレックスを抱えることで、「人に見られている気がする」「どう思われているのか気になる」という意識にさいなまれ、精神的にダメージを負う人も。
決して、「受け口だからいい」「受け口だから悪い」ということはありません。しかし、現実的な問題として、極度の受け口であればあるほど、好奇の目で見られてしまうことがあるのも事実です。
見た目で日常生活に影響をおよぼしてしまうことは、望ましいことではありませんので、矯正可能であれば治してしまいましょう。
虫歯
噛み合わせが悪いことが要因で、虫歯にもなってしまいます。受け口だと歯と歯との隙間ができてしまいますから、そこに食べ残しが詰まってしまうのです。
「でも歯磨きしているから大丈夫」と、思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、受け口で歯並びが歪んでいると、どうしても磨き残しができてしまいます。とくに、内側は磨き残しやすいため、ここから虫歯になってしまうケースも多々あるわけです。
同様に、磨き残しがあることで歯周病や歯肉炎にもなりやすく、口臭の要因ともなってしまいます。審美的にも難があるうえ、虫歯や歯周病、口臭まで発症したとなると、より他人からの心証は悪くなりますので、やはり受け口も矯正するべきなのです。
顎関節症
受け口のように下あごが突き出た状態のままだと、負担がかかり続けたあごは少しずつ損傷していきます。すると、筋肉にもダメージを与え、あごに痛みを覚えるのです。
顎関節症になると現れるのが、口を開けようにも痛みで開けられない、開けようとすると異音がする、などの症状。
耳と顎は隣あわせていますから、小さな音でもかなり気になるため、顎関節症に悩まされている人は意外と多くいます。
異音だけならまだしも、痛みが激しくなると食事や会話もままならず、日常生活にも支障をきたすため放置しておくのは厳禁。 置、どっちがより高額な医療費が必要?
受け口を放置することで起こる疾病や障害の治療費は、どれくらいかかるのでしょうか。その費用相場をご紹介します。
- 虫歯治療
保険適応で5,000円程度が相場。 - 肩こり・腰痛
整形外科での保険適応治療は2,000円ほどで、整体・カイロプラクティックでの施術は5,000円ほどが相場。 - 顎関節症
顎位矯正は300,000円程度、スプリント(マウスピース)療法による治療は5,000円程度で、外科手術の場合は150,000円前後が費用の目安。
なお、受け口を矯正する場合の費相場は、ワイヤー矯正が800,000円前後、裏側矯正が1,300,000円前後、マウスピース矯正が1,010,000円前後となっています。
受け口の原因と治療法は?
あらゆる疾病・障害を引き起こす要因となる受け口ですが、そもそも受け口となる原因は何なのでしょうか。治療法についてもあわせて見ていきましょう。
受け口の原因はいくつかありますが、そのうちのひとつは遺伝によるもの。両親のいずれかが受け口あると、その子どもも放っておけば受け口となる確率は高くなります。
その場合、成長による変化を観察しながら、受け口になる傾向があらわれたら治療しいくことが望まれます。できる限り、成長が終わるまでに受け口治療を完了させてください。
遺伝以外の原因では、発育過剰、または発育不全があげられます。下あごの発育が過剰な場合、反対に上あごの発育がよくない場合、上下のあごのバランスが悪くなり、受け口となってしまうのです。
また、後天的な原因として、舌の「クセ」によって受け口となってしまうことも。舌で下の歯を前に押し出すようなクセがあると、受け口となる可能性があります。
クセが原因のケースでは、クセも改善しなければ意味がありません。舌や唇の筋肉をトレーニングする、口腔筋機能療法で悪癖を改善していきます。
発育が原因でまだ成長過程の場合は上顎拡大装置を使ったりしますが、基本的には治療・矯正は、ワイヤーによる矯正が一般的です。
骨格自体に問題がある場合は、ワイヤー矯正では対処しきれないので外科手術をするしかありません。
なお、すべての症状に対応できるわけではありませんが、目立たせずに矯正したい方は歯の裏側にワイヤー装置をつける裏側矯正、透明なプラスチックなどを使ったマウスピース矯正などもおすすめです。
クリニックを選ぶ際は、矯正方法の選択肢を広げる意味でも、幅広い治療法に対応できる歯科を選ぶことも大切でしょう。